020_中国の平均賃金について
中国では、平均賃金が様々な政策のデータの基となっており、これらのデータは会社経営にも大きく関わってきますので、発表される度に注目し、上げ幅を研究することが必要になります。平均賃金は、社会平均給与「社会平均工资(shèhuì píngjūn gōngzī)」と呼ばれ、各地域の人力資源社会保障局、略して人力社保局「人力社保局(rénlì shèbǎo jú)」から毎年発表され、その度に、関連するデータも調整されています。ここ数年、中国の目覚ましい経済発展に伴い、社会平均給与も急上昇しているため、2~3年前のデータが古すぎて使えない、ということもありますので、社会平均給与の発表は常に注視しておく必要があります。社会平均給与が関わる政策は以下のとおりです。
●社会保险费用缴费基数的下限、上限
(shèhuì bǎoxiǎn fèiyòng jiǎofèi jīshù de xiàxiàn、shàngxiàn)
社会保険費用納付基数の下限と上限。
:社会保険費用は労働者個人の昨年の平均給与を基にして基数を決めますが、その基数には下限と上限が設けられており、基数が下限に満たない場合は下限を基数とし、上限を超える場合は上限を基数とします。下限と上限の算出方法は、それぞれ、社会平均給与の60%、300%です。
●住房公积金缴费基数的上限
(zhùfáng gōngjī jīn jiǎofèi jīshù de shàngxiàn)
住宅積立金納付基数の上限。
:社会保険同様、住宅積立金の納付基数も労働者本人の平均給与を基に計算され、上限は社会平均給与の5倍となっています。なお、下限はその地区の最低賃金と決められています。
●取暖费(qǔnuǎn fèi)
暖房費補助。
:定年退職者への補助を対象とした暖房費補助です。算出方法は、社会平均給与×2%×会社従業員数/月となっており、会社が支払います。従業員の負担はありません。
●残疾人就业保障金
(cánjí rén jiùyè bǎozhàng jīn)
身体障害者就業保障金。
:企業は一定の割合で身体障害者を雇用する義務がありますが、身体障害者を雇用していない会社は、社会平均給与額を基にして算出された額を、身体障害者の就業保障金として、毎月納付する義務があります。算出方法は、(従業員総数×1.7%-企業が採用している身体障害者数)×54,820元(社会平均給与年額)となっています。
●经济补偿金的上限
(jīngjì bǔcháng jīn de shàngxiàn)
経済補償金の上限。
:経済補償金は、労働契約を解除される従業員に対して、会社が支払う補償金です。経済補償金の算出方法は、労働者本人の勤続年数×本人の平均給与月額ですので、場合によっては、補償金が膨大な額に膨らむことがあります。それを抑えるため、社会平均給与月額の3倍を経済補償金の上限と決めています。
昇給率を算定する際に、社会平均給与を前年度と比較して、参考にする会社も多いですが、当局でもベースアップのガイドライン「工资指导线(gōngzī zhǐdǎo xiàn)」を毎年発表しています。ガイドラインでは、上線・基準線・下線「上线、基准线、下线(shàngxiàn、jīzhǔn xiàn、xiàxiàn)」の三種類の基準を設けています。
上線は、警戒線「预警线(yùjǐng xiàn)」とも呼ばれ、昇給が早い、もしくは給与水準が高い会社に対して警戒を促すという側面があります。基準線は、正常な生産活動をしており、利益を出している会社を対象としています。下線は、主に赤字企業を対象とした昇給率です。
ガイドラインには、強制力はありませんが、会社と従業員の賃上げについての話し合いや、会社自身が昇給率を決める際に、これら三つの基準が非常に参考になりますので、当局からガイドラインの発表があった時は、ぜひ確認することをお勧めします。