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中国での働き方改革は実現するか?

2017/07/28 執筆者 :

最近は中国の日系企業の人事制度以外にも日本国内の企業の人事制度も数社、手掛けたりしています。私が人事制度のコンサルティングを始めたのが1991年でしたから、制度ばかりやってはや256年が経ちました。そのうち初めの10年は日本の代表的な人事制度である職能資格制度、その後の15年くらいは中国の職務給制度と、2つの大きな制度を経験してきたことになります。まあ、私がこの仕事を始めた翌年(1992年)にバブル景気が破たんしましたので、私自身がバブル景気を謳歌できたのはわずか1年足らず、と言いますか、栄枯盛衰と言いますか、確かにつらい時期を経てきたわけではありました。

今担当している日本の企業のひとつでは、複線型のコース選択制の構築・導入を進めています。一般職、地域限定職、総合職、専門職、管理職の5つのコースから、社員の希望や適性に応じてキャリアパスを選ぶことができるというものです。従来までは単一のコースしかなかったため、ポスト不足や昇給との兼ね合いから無理やりポストを作ってしまった結果、役職者が全体の25%まで膨れてしまい(企業の管理職比率は平均で11%)、マネジメントラインが機能しなくなってしまっていましたが、これで社員の進級先が広がりましたので、徐々にきれいなピラミッドを形成する組織に変わっていくことかと思います。

日本では最近、盛んに働き方改革が叫ばれており、必ずしも毎朝会社に出社しなくても、いろいろな働き方があってもいいんじゃないの?という風潮が高まりつつあり、この複線型コースも大きく言えば働き方のひとつになるわけですが、今まで中国で総合職だとか一般職だとかの区分で人事制度、キャリア制度を作ったことはありませんし、おそらくまだそこまでの選択の余地が用意されていないのかとも思います。せいぜいあっても管理職と専門職程度です。ましてや地域を限定して勤務するという選択は、もともと中国人社員は転勤や異動を嫌がる傾向が強いのと、会社側に立って考えてみても、転勤を伴う人事異動が整っていない、そもそも転勤させるほどの受け皿(分公司やグループ会社)がない、という背景から、言ってみれば社員全員が地域限定のようなものでもあります。

ただ、働き方の選択という意味では、おそらく中国人は日本人以上に割り切って、また合理的に考えると思うので、今後は在宅勤務だとかサテライトオフィスだとかが急速に整備されていくような気がします。それだけでも北京や上海、広州の通勤渋滞が緩和されるのはよいことです。経済学的には国民の所得が増え、余暇の選択肢が広がったり、それに伴う消費が伸びていくに従い、国民の金銭に対する欲求の比重は徐々に下がっていくみたいですので。