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≪残業管理と不定時労働制≫

2016/09/12 執筆者 :

日本では「みなし労働」という、外勤の営業など事業所外で行われ、時間管理が困難な勤務については、所定労働時間勤務したとみなすことができる制度や、「裁量労働制」のように、管理職など、特定の資格から上位の従業員に対して残業手当を支払わないという制度があり、いずれも労働基準監督署への届出が必要ですが、中国ではみなし労働や裁量労働制のような制度はなく、原則として営業担当者であれ管理職であれ超過勤務については残業手当を支払わなければならないことになっています。

2008年、労働契約法の施行に伴い、その前年の20071月から中国では、「不定時労働制」という制度が施行されています。これはまさに日本のみなし労働と裁量労働をセットにしたような制度で、必要な書類を管轄の労働局に申請し許可を得れば、管理職や外勤営業のような仕事を担当している従業員に対しては残業手当の支払いを免除されるという制度です。この不定時労働制の対象職務として、以下の4区分が定められています。

①企業の高級管理人員、外勤人員、営業人員、当番者の一部、及び他の標準労働時間により評定できない労働者

②企業の長距離運送人員、タクシー運転手、軌道、港口、倉庫の積卸人員の一部及び工作性質が特殊、機動作業要の労働者

③企業の消防と生化学救援当番者、当番の運転手等

④その他生産特性、労働特殊需要又は職責範囲の関係による不定時労働制に適合する労働者

不定時労働制の申請については大きく分けて、(1)営業、運転手など、担当する職務に対する申請 (2)管理職のように階層に対する申請の2つに区分されますが、近年、従業員の残業手当の削減を目論んで、企業側で従業員を安易に管理職に登用してしまうケースが増加していることから、管理職に対する認定申請は職務認定の申請と比較して、2008年以降、どの管轄労働局でも非常に困難になってきております。

中国では、企業管理職のような労働時間の融通性が認められる職務を担当している従業員や、営業職のように事業所外での勤務により時間管理が困難な職務を担当している従業員に対して残業手当の不支給を認める法律が存在しないということなので、企業としては残業手当の支給を免除するために、労働契約書における合意や就業規則の中に不支給の明記を行ったりするわけです。ただ、従業員が事後にこの措置に不服を抱き、仮に労働仲裁や労働訴訟として和解形成となった場合、これらの合意或いは記述自体が無効として判断され、従業員側が勝訴するケースも多く見受けられます。そこで企業としては、グレーな部分はできるだけ排除したいという意向から、不定時労働制の申請を検討することになります。

不定時労働制の申請が認められる従業員の職務は前号で記述した4区分となるのですが、まず会社は、会社を登記している地域(区)の管轄労働局へ不定時労働制の申請を行います。この際、原則として以下の書類の提出が求められます。

①不定時・総合労働時間制申請表

②従業員の業務及び休憩に関する計画申請

③実施に関する従業員の同意に関する名簿

上記③の従業員名簿は、不定時労働制を執行した場合、その対象となる従業員のみ記載します。ただ、必ず本人同意の証であるサインを得ることが必要となります。また従業員名簿を提出しても、不定時労働制の許可は、その企業の職務(例えば「営業職」)に対して許可を与えますので、名簿の提出後、従業員の新規雇用や退職が発生しても、許可に対しては影響を及ぼしません。更に管轄区によっては、タイムカード等による過去3年間の労働記録や、工会或いは従業員代表の同意協議書の提出も求めるところもあり、その対応は区によって様々です。

以上の書類を準備し、労働局に申請すれば概ね15営業日で審査結果が通知され、申請許可が下りれば許可証が郵送されてきます。許可の有効期間は1年間ですので、次年度からは許可証の更新を行うことになります。近年は労働関連法の改定や、新しい労働政策の施行も多く、従業員の権利保護の観点もあって、晴れて許可をとったものの、労働局による更新が拒否されてしまうというケースも増えてきています。

(了)