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2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.8
人事管理業務の重要性

2016/08/17 執筆者 :

 

これまで、給与をはじめ等級、評価、福利厚生等の各種人事制度について紹介した。では企業では、各制度をどう運用し管理しているのか。今回は盲点になりがちな人事管理業務について見ていきたい。

 

日系企業の海外での事業活動が活発になる中、海外で働く日本人は増加しており、外務省の統計によると201410月時点で、前年に比べて3万人以上増加し、これまでで最多となる129万人を超えた。海外勤務者がいる企業では、現地法人と国内本社の間で、社員の人事異動や給与支払いに関する申請や管理業務が増えているものの、「社内システムが統合されていない」「各種申請は都度メールで行っている」「現地に任せているので実態が把握しにくい」など、そのプロセスの一体化や可視化を求める意見が多くある。

 

 

では、具体的にはどのような項目の管理が必要なのだろうか。企業によってシステム管理する項目は異なっているが、以下は日本駐在者の赴任で発生するお客様からニーズである。

 

1.経費精算

赴任先で発生する医療費、子女教育費などの補助手当に関する各種精算申請を管理したい。

 

2.支払明細書のオンライン化

海外給与の精算、補助精算などの支払明細書のオンライン化を図りたい。

また、赴任者本人からは現地給与の手取り額の明細や送金明細書を確認したいというニーズも。

 

3.社内申請のワークフロー

赴任中の必要手当の変更届や一時帰国の事前申請、帰任時の支度金、旅費精算等、各種申請項目を一元管理したい。

 

4. 赴任者・帯同家族情報一括管理

赴任日をはじめ、ビザ情報、住所等の連絡先など、海外赴任者の赴任時に関わる情報、また帯同家族情報を一括管理したい。危機管理対策や緊急連絡先などを作成したい。

 

日本本社ではシステムやイントラネットで上記が当然管理・運営されているが、本社が利用している人事管理システムは中国ではアクセスできないケースがほとんどだ。そのため、上述したようなアナログな管理を行っている企業が多いのが実態である。

 

中国の現地スタッフの管理については、人事制度の構築は進んできているが、8割の企業がいまだにエクセルベースのアナログな管理をしていると見受けられる。社員数50名以下の規模であればエクセルやメールである程度管理できるかもしれないが、これ以上の規模になると管理やコスト面でもアナログな管理だと運営が難しくなるのが実態だ。また、担当者が駐在員の場合、3年程度に一度の頻度で管理担当者が変わるため本当に管理がきちんと行われているかが不透明なケースが多い。

 

例えば、人事制度に関する相談を企業から受け、給与計算を行っているエクセルを確認すると計算式が間違っていることも少なくない。これは社会保険負担率が毎年変動することや社会保険の納付率が戸籍によって異なるなどの理由があげられる。さらに、法律で定められた最低基準の数字をクリアしているかどうかの判断を外部専門家に確認せずに運用しているケースもあることから、従業員に悪気がなくとも、間違った数字で運用した結果、法律違反をしている企業が出ている

 

システム化によってリスク管理も実現

上述した労務管理関連の項目に加え、エクセルで管理をしていると、上司となる日本からの駐在員が着任する度に過去の履歴が引き継がれなかったりするケースが多いが、システムで管理することでスタッフの経年変化する評価を確認することが可能となる。。

 

日本から駐在で来た人はえてしてこのような人事管理業務をローカル社員に一括で任せているケースが多い。よって、業務を担当している社員が独自に考え、判断し人事労務管理が行われている。また、多くの場合、日本から赴任した駐在員は人事業務の経験がなく、このような実態を把握したり、改善するには困難な状況にある。経費精算一つにしてもマニュアルがない等、恐らく日本本社の管理部門からすると驚くことが多々ある。人事労務管理のシステム化は、業務のブラックボックス化をはじめ、リスクを防ぎ、問題の早期発見を実現する。

 

運営方法の変更と併せて、社員に対するコンプライアンス研修も並行して実施することを薦める。個人情報や企業の機密情報の取り扱いに対する意識はやはり日本と中国では異なる。小さなことだが、例えば、エレベーターでは他社の話をしない等、このような日常シーンでのマナーや意識を中国では醸成する必要があると感じる。

 

また、人事労務管理をシステム化するにあたり、現在その業務を担当している社員へのポジティブな働きかけが重要となる。例えば、現在出退勤管理や費用精算、入退社管理などをエクセルで管理しているのであればその入力や管理業務を行っている社員は「自分の仕事が奪われる」と不安や不平を示すことがある。このような事態を防ぐためには、会社として、システム化を図る狙いやメリットを明確にする共に、社員一人ひとりにいかに生産性の高い仕事に就いてもらいたいかやどのようなキャリアパスがあるかを提示するかが大事である。これには日頃の上司と部下との間でのコミュニケーションが鍵を握る。

(以上)

 


 

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給与情報・福利厚生分析レポート