2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.7
2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.6
これまで6回、企業の給与を中心に企業の実態やトレンドを紹介した。今回は、福利厚生のトレンドや重要性を見ていきたい。
人事制度を構築する上で、評価、昇給、教育研修等に並び、最適な福利厚生は従業員の帰属意識の醸成やモチベーション向上に寄与する。通勤や食事手当の一般的な福利厚生をはじめ、多様なライフスタイルをおくる社員一人ひとりの組織への貢献度を高めるために、現状の福利厚生制度を見直す必要性を感じている企業は多いと感じる。まずは、パソナが実施した「現地社員の昇給賞与・福利厚生に関する調査」から見えた実態を紹介したい。
項目ごとのトレンド
通勤手当は「支給あり」が73.5%から78%に、「実費支給」が34.6%から43%に、と共に増えている。「固定給」が減り、「実費支給」が増加する結果となった。また、支給金額は「月額151~200元」が最も多い。
▼通勤手当 支給の有無
▼通勤手当 支給金額
(単位:RMB/月)
次に、食事手当は2社に1社が食事手当(食堂提供含む)を導入しており、前年度と比較し、大きな変化はない。2000年より前に進出した多くの企業では会社が社員の生活を守る意識が強く、食事手当が一般的であったが昨今は見直しを図っている企業も見受けられる。
▼食事手当 支給の有無
▼食事手当 支給金額
(単位:RMB/月) |
次に通信手当については、「支給あり」が微増(75.1%から79%)。会社携帯を支給していないケースが意外と多いが、今後コンプライアンスや個人情報流出等の事故防止を考え、運営について見直す必要があると考える。
▼通信手当 支給の有無
▼通信手当 支給金額
(単位:RMB/月) |
次に語学手当は、支給していない企業が年々増えている。今年度も「支給あり」と回答した企業が前年より4.3%減少した。業務に必要な能力として語学力が求められるため、一定の水準は職務給として給与に含まれるよう整理されてきたことが背景にある。よって、業務に必要のない語学力を身に付けていても手当としては反映されない。なお、支給金額については、月額500元以下が70%以上を占める。
▼語学手当 支給の有無
▼語学手当 支給金額
(単位:RMB/月) |
最後に、社員旅行は「あり」が4%増加し、前年検討中の企業が正式に導入したことが見受けられる。一人当たりの予算として、501~1000元が最も多い結果となった。
▼社員旅行 実施の有無
▼社員旅行 一人当たりの予算
(単位:RMB/月) |
今後の課題
昔に比べ、社員の生活は豊かになり、それに伴い価値観をはじめ、ライフスタイルや求めるものが多様化している。そのため、企業は社員一人ひとりが自ら必要なメニューを選ぶことができる、選択式の福利厚生制度(カフェテリアプラン)の需要が今後増加するだろう。また選択できるメニューは商品から旅行、医療保険等まで、選択肢が多い方が社員の満足度は高まる。時代や文化にあった制度を導入することで、優秀な社員の囲い込みをはじめ、採用活動でのPRポイントが増えることで、結果、トータルでの人事コスト削減も達成できる。
そして中国では、価値観が多様化する一方で、現在も家族を大切にする文化が根強い。また人的ネットワークを重視し、家族や友人、お世話になっている人にギフトを贈る風土がある。例えば、中国では共働きの家庭が多くあるが、日本のような宅配サービスが整っていないことから、宅急便を職場で受け取ることが多い。会社の福利厚生制度で社員が申請した電化製品が会社に届くと、「それ、何?」と社員同士のコミュニケーションにまず繋がる。また、前述した通り家族に贈り物をする文化があるが、例えばそれを母親に贈ると、ギフトを受け取った母親は「いい会社だ」と感じ、社員の誇りや帰属意識を高める効果がある。
優秀なローカル社員の採用や定着を図るには、給与、教育研修制度等に加え、このような中国の文化に合った福利厚生制度の整備も企業は整備する必要は今後増加するだろう。
(以上)
毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。