2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.6
職種別給与 営業、エグゼクティブ部門編
前回は、主に管理部門の職種における給与について紹介した。今回は、営業をはじめ、総経理、副総経理の給与を見ていきたい。
これから紹介する給与データはローカル社員のトレンドだという点が重要なポイントである。パソナが実施した「現地社員の昇給賞与・福利厚生に関する調査」は、1,608社の協力を得ているが、ローカル人材が総経理を務めている事例が115社、副総経理は162社のサンプルが取れた。高級ポジションの給与サンプルとしては、多く取れているかと思うので、是非一つの参考数字として、ご覧いただければと思う。
営業部門の給与トレンド
以下のグラフは「営業」の給与調査の結果である。「新入社員/ジュニアスタッフ」は当職種2年未満をさす。「一般スタッフ」は2年以上5年未満、「シニアスタッフ」は5年以上、そして「課長/マネージャー」及び「部長/マネージャー以上」は各会社における役職のため当職種の経験が6年以上の方もいれば10年以上の経験を持つ方も含む。
前号で取り上げた管理部門の給与トレンドとは異なり、営業職はジュニアレベルから平均給与が5,000元を超え、シニアスタッフ(職歴5年以上)で、10,000元を超えている。管理職の場合、シニアスタッフでは10,000元を超えていない職種もあるため、営業部門の方が全体的に給与が高い印象を受ける。この背景は、やはり営業部門は会社にとって投資の対象となる部門であることが1つ挙げられる。また、管理部門に対して営業部門の業務は定量的な評価を比較的行いやすいため、年度評価時に昇給をしやすい。これまで中国経済が伸び、日系企業の売り上げも伸びていたことから、営業部門の昇給はしやすかったのではないだろうか。評価者となる駐在者も、企業が海外駐在員を派遣する際、管理部門より営業部の経験者が多い。営業経験者が中国法人に着任し、人事規定や評価制度等を構築する人事部の業務も担う場合、管理部門の社員の評価や目標管理をどのようにすべきか見当が付きにくい。そのため、評価をつけやすく馴染みのある営業職の方が優遇されやすくなり、給与が管理部門より高くなる傾向にある点も背景としては考えられる。
営業職の給与のなかでも、部長職の結果が興味深い。課長職までは、語学の差は給与に幅があまり出ていないが、部長職になると、言語による意思疎通がしっかり出来ることが望まれているためか、日本語もしくは英語どちらかビジネスレベルの人材を重宝している傾向が見受けられる。よって、コミュニケーション力によって8,000~9,000元違いがある。部長職となると、現場で組織文化を創る作業や事業戦略の落とし込みを行う時に、日本本社とのやり取りが増えるため、レベルの高い日本語か英語力が求められる。さらに、語学力に加え、お互いの文化の理解等の異文化コミュニケーション力も求められる。このようなスキルが給与に反映されているといえる。
▼職種別給与 営業編
エグゼクティブの給与トレンド
副総経理の給与は約34,000元となり、営業部門の部長職より約20%以上高い。このように経営者クラスになると、給与レンジが一段とあがる。ボーナスは他の社員とさほど差がなく、2か月分の月給で計算されている。当ポジションは日本で採用され、駐在員として中国に赴任している中国国籍の人材が多い。日本本社の組織をはじめ、考え方や企業理念等が浸透していないと中国法人のエグゼクティブとして配置しにくいことがあるため、このクラスの人材は日本採用が多いのではないだろうか。
日系企業で勤めている40代の副総経理、もしくは副総経理に昇進させたい部長クラスの人材は、これまでのキャリアを、日系企業で積んでいる人が多い。40代になってからの転職は中国でも活発ではないが、一定数で部長クラスや副総経理クラスが動いている。たくさんの課題はあるが、中国で企業し、老板(社長)を経験した人材や民営企業の幹部を活用する日系企業も今後増えていくと、エグゼクティブ層の採用も幅が広がるかもしれない。
▼職種別給与 副総経理編
平均値給与: 29,437RMB |
手当て額: 4,525RMB |
ボーナス: 69,014RMB |
最後に、総経理の給与は約45,000元となった。総経理はトップとして、ビジョンを掲げることが求められる。また、総経理と副総経理の関係は極めて重要である。総経理が描くビジョンを副総経理がサポートし、どう上手く他の社員に伝え、ビジネスの形として落とし込むか、またあらゆる調整をいかに図るかは副総経理の手腕となる。総経理と副総経理のコミュニケーションは会社の未来を左右するといっても過言でない。給与を見ても、語学不可(日本語・英語)でも、総経理に置いている日系企業がある。しかも給与が他語学スキルを保有している総経理より高い。総経理が戦略をしっかり描き副総経理に伝え、副総経理がしっかりと社内調整を行い、うまく事業運営をしているのではないだろうか。
▼職種別給与 総経理編
平均値給与: 39,097RMB |
手当て額: 6,197RMB |
ボーナス: 86,153RMB |
エグゼクティブ層の採用
総経理や副総経理のポジションは他の職種と違って、日本本社でもしっかりと面接や採用プロセスを踏むことを薦める。中国法人のみの判断で面接や選考を実施しているケースもあるが、日本との密な連携も必要なポジションであるため、中国法人のみで 選考してしまうと今後の業務のやりづらさにも影響する可能性がある。日本本社の意思決定者にもしっかりと選考段階から入ってもらい、中国事業を任せられる人材であるかどうか、求められる素質やスキルを持った人材を採用するようにすべきだ。
中国では2000年前後に日系企業の進出ラッシュがあったが、約16年経ち、当時30代後半で入社した部長職クラスの経験がある人材が退職していく「企業の中での高齢化」が上海や北京で課題としてあがっている。10年後には広州や深せんでもこのような現象が起きるだろう。今後、このようなマネージャー以上やエグゼクティブ層の高齢化問題も企業の人事面での課題になるだろう。
(以上)
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