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現地で日本人を雇う場合の法律上の留意点

2016/06/17 執筆者 :

日系企業の中には中国現地にて日本人を雇用、いわゆる現地採用で雇い入れる企業も少なくありませんが、日本人に限らず、中国人以外の外国人を現地で雇用した場合、中国の国内法によってその従業員の権利はどこまで守られるべきものなのか、言い換えれば中国の国内法はどこまで外国人に適用されるのか、ということがしばしば議論されてきております。私のところにもときどきこのようなケースでご相談頂くことがあり、例えば現地採用した日本人を解雇した場合には、中国人の解雇と同じ扱いになるのかという内容が多かったりするのですが、今回のコラムでは司法判例も含め、そのあたりをお話したいと思います。

まず一般論として、中国での正式な就業手続を踏まえ、就業証を取得した外国人は中国の関連法律に守られ、解雇、すなわち労働契約を解除した場合には、中国人同様、労働契約法における経済補償金の規定が適用されることになります。このことは「外国人在中就業管理規定第26条」において、会社に雇用された外国人との間に労働争議を生じた場合、中華人民共和国労働法及び中華人民共和国企業労働争議処理条例に基づいて処理すると定められております。このことは判例からも明らかで、上海市第二中級人民法院(二中院)の判例では雇用主(会社)に外国人に対する経済補償請求を認めた事例があります。

但し一方では、上海市第一中級人民法院(一中院)は外国人から提出された実際の訴えに対する審査において、会社と従業員双方が締結した労働契約に中国の労働関連法の適用、或いは経済補償金について特別な約定がない場合には、外国人の経済補償金請求を認めない、と、二中院とは異なる判断を行っております。司法観点から、また直近の裁判判例から考えますと、上海市一中院の判断が今後は主流になっていく傾向がうかがえます。従ってこれらの状況を踏まえて考えた場合、現地で日本人を雇用する上での留意点は以下の2点になるかと思います。

  1. 法律に則った就業の手続を行う。(就業証はもちろん、転職の際に就業証の変更届を行っているか、等)
  2. 労働契約書には契約の解除となる条件だけでなく、その場合の補償(経済補償)についての取決めを明確に定める。
  3. ①についてはほぼ間違いなくどの企業も行っているとは思いますので、肝心なのは②をきちんと労働契約書に明記しておくことです。裏を返せば、法律上はこのケースについてまだ確立されていないところもあり、あくまでも判例重視の立場で司法も判断してきますし、契約の上でどのように合意されているかによって結審されるでしょうから、重要な一文であることには間違いないでしょう。