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2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.4
研修の実態と重要性

2016/05/03 執筆者 :

前回は、賞与と離職率にについて紹介した。今回は、企業の教育研修について見ていきたい。

 

傾向として、大手企業では新入社員からマネジメント研修まで、教育研修制度がしっかりと構築されている。日系企業が中国でビジネスの現地化を成功するためには、ローカル人材の研修は不可欠である。社員が入社後、仕事をしながらスキルを身に付けるOJTだけではなく、人事制度としてしっかり研修プログラムを構築することで社員の成長はもちろんのこと、働く意欲や組織への帰属意識、そしてひいては会社の成長に繋がる。

 

パソナが実施した「現地社員の昇給賞与・福利厚生に関する調査」の結果によると、研修の有無については、70%の企業が「あり」と回答している。そして研修の内容については、「管理職研修」という回答が多く、「導入済み」(38.2%)及び「導入検討中」(38.4%)共に最も高い結果となった。日本のように終身雇用ではなく単年契約を企業と社員が結び、社員の入れ替わりが活発な中国の場合、企業は必然的に優秀な人材にコストを掛ける。よって企業が管理職研修に力を入れるのは自然と感じる。キャリアやマネジメントの段階に応じて、社員の長期的なキャリアプランを可視化し、本人にそれを伝え、それに沿った研修プログラムを設けることで社員のモチベーション維持にも繋がる。

 

▼研修 実施有無

研修実施有無 PASONA

 

 

 

 

▼研修導入状況

青:導入済み   赤:導入検討中

研修導入状況 PASONA

 

 

日系企業は研修が充実している

研修内容において、「管理職研修」が多いほか、「語学研修」(導入済み21.1%、導入検討中17.2%)「マナー研修」(導入済み22.4%、導入検討中17.4%)が20%以上もある結果には、正直驚きを感じた。労働市場の流動化が進んでおり、絶えず人が入れ替わる文化がある中国において、語学やマナー研修は企業にとって「消えていくコスト」になりかねない。だが、5社に1社は実施している。やはり日系企業はあらゆる資源において、投資を集中させるのではなく、例えば人事であれば、優秀な人材だけではなく、従業員全体の底上げを考えている特徴がこのデータから伺える。日本では終身雇用制度がまだ根付いており、社員は比較的辞めないため、研修等を通じて時間や経費を社員に投資してもリターンが見込める。一方で、中国では13年の契約を社員と企業が締結する文化のため、企業も投資する社員と投資しない社員を選択するのが自然である。日系企業とローカルや欧米企業の異なるポイントの1つではないだろうか。

 

また「専門資格研修」(導入済み29.4%、導入検討中29.5%)については、会計の資格や工場のエンジニアを対象とした危険物の取り扱い、また社内にマイスター制度(自社認定の教育プログラム)を設けて、特定のスキルや職能に関連する研修を実施している会社もある。

 

研修のトレンドを地域別にみると、上海では上級マネジメント研修が多い。一方で広州や深センなどの南部ではまだ初級マネジメント研修が多い。問題解決力やチームビルディングのスキルを身に付けることを目的に、係長や課長クラスを対象とした内容が目立つ。上海の場合、初級マネジメント力を持った社員がある程度育っていることから、その中からまた選抜して、部長職以上の社員を育てるため、組織風土の作り方や上司と共に事業立案計画を考えるスキルを育む研修が最近増えている。上海は本社機能が多いことから、会社の大きな方向性を作れる人材の育成が課題である。

 

 

海外研修の薦め

次に、海外研修については、66%が「あり」と回答している。2015年に比べ、13%増えている。これは大変いいことだと感じる。ローカルスタッフが日本本社で時間を過ごしたり、社内の人脈を広げたり、企業理念や仕事の進め方を日本で体験することはプラスになることが多い。また、日本での規模が大きくても中国に進出している多くの日系企業は数十名規模の事業所がほとんどであるため、日本で会社の規模やダイナミックさを感じることで社員の士気が高まることも多々ある。次世代のリーダー育成を目的に、優秀な社員を日本や海外で研修する機会を企業が益々増やすことを期待している。

 

▼海外研修 実施有無

海外研修実施有無 PASONA

 

 

▼海外研修期間

海外研修期間 PASONA

 

 

人を活かすコミュニケーションと研修制度

中国に赴任する社員が中国で成功するためには3つのポイントがあると考える。一つ目は従業員との関係構築。2つ目は、戦略戦術。そして3つ目は、語学。1つ目と2つ目を達成するために語学力が鍵を握ることは言うまでもない。よって、やはり語学は重要だ。ただし、語学もでき、戦略戦術もあったとしても従業員と良好な関係が築かれていなければ、社員は聞く耳を持ってくれない。メンバーとの信頼関係や日ごろのコミュニケーションがやはり非常に大事である。

 

中国に進出している日系企業の大多数は50名以下である。そんな中、自社で教育研修制度の設計をはじめ、人事制度との融合、研修の運営等を全て行うのは容易ではないが、教育研修は企業価値を高める重要な要素のため、できることから一つずつ行うことで長期的な効果が出ると考える。

 

 


 

毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。

給与情報・福利厚生分析レポート