2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.2
従業員の増減予測
前回は、2016年の昇給予測について述べた。今回は、従業員の増減予測と日本人赴任者の増減予測について紹介したい。今年は2月に旧正月があり、「休み明けに従業員が戻ってこない」「退職の申し出がある」「12~1月に採用できなかった人材をこの時期に採用する」等、従業員の増減に変化がある時期かと思う。2016年は各社どのような採用計画を立てているのか、見ていきたい。
ローカルスタッフ数の増減予測
今後一年間のローカルスタッフ数の増減予測について、全体で49.0%が「変わらない」と回答し、40.0%が「増える」、11.0%が「減る」という結果だった。
地域別の従業員数の増減予測は、「増える」という項目においては「その他」53.8%を除いた華東エリアが41.9%と最も高く、逆に「減る」という項目では華南エリアが15.7%と最も多かった。華南地区に多く進出している繊維・アパレル産業が東南アジアへシフトしていること、また製造業の余剰人員の雇用調整が主な原因ではないかと思われる。
▼地域別従業員数の増減予測
一方で、現地で日系企業の幹部の方々と話をすると、広州に展開しているメーカーや商社では既存ビジネスに加え、新規ビジネスを立ち上げる準備を今年行う動きも見受けられる。大規模な増員はないが、引き続き各企業の事業戦略に則った、専門スキルを要するような人材ニーズは出てくると考えられる。
業界別の従業員の増減率においては、「食品」65.4%、「小売業」57.7%、「通信・IT」50.9%が高い増員率となった。住宅や自動車といった贅沢品より、食品や生活用品のように一般の消費者向けの商品を扱う業界が伸びていることが伺える。
▼業界別従業員数の増減予測
次に、日本人赴任者において2016年の予測では「減らす」は15%弱だが、中国現地法人が把握していない日本本社の人事異動が数字に反映されていないため、2015年度同様、もしくはそれ以上の数値になる可能性が高い。
▼日本人赴任者の増減:過去1年間の赴任者数の増減
増えた:12%
減った:20%
変わらない:68%
▼日本人赴任者の増減:2016年の赴任者数の増減
増える:8.9%
減る:14.9%
変わらない:76.2%
昨今、赴任者は若年化してきている。日本本社の狙いとしては、若いうちに中国で経験を積み、日本に帰国した後、将来は幹部候補として再度中国に赴任等、長期的なキャリアプランを見据えた人員配置も一部見受けられる。一方で、ローカルスタッフからすると、自分より年齢や経験が浅い上司のもと働くケースが増えており、両者のコミュニケーションの注意や赴任者に対する多文化チームマネジメント、評価等の研修及び啓蒙の重要性が高まっている。
次に、業界別の日本人赴任者数の増減においては、「食品」19.2%、「政府関係」18.2%、「消費財」15.2%が増加トップ3を記録した。ローカルスタッフの増減トレンド同様、食品や消費財等、国内市場を対象としが業界が好調である。
▼業界別日本人赴任者数の増減予測
今後求められる人材像
中国のマーケット、またその先にある東南アジア市場を獲得するために、世界各国からグローバル企業が集結する中国において、ビジネスを成功するためには唯一無二の技術力、あるいはローカルマーケットを熟知した高いマーケティングや販売力がないと難しい。
日系企業は他国の企業と比べ高い技術力を擁しながらも、海外ではマーケットを獲得できずに苦戦するケースが見受けられる。高い技術力のある製品を日本人が作り、自由競争が強みである中国人に営業・マーケティングを任せることで、売上を拡大していくことが重要ではないだろうか。現在雇用している従業員(日本語を話せる従業員が多いと思うので)には日系企業間のつながりを継続してもらいつつ、新規採用ではマーケットを開拓する能力がある人材へとシフトしていくだろう。このようなローカル人材の採用は各社で争奪戦になり、給与も高騰するだろうが、中国での売上を上げるためには、必要な投資ではないだろうか。
各社で求める人材ニーズは異なるが、採用部門は中国全土から採用を行っていく必要がある。ご存じのとおり、北京には本社機能や研究開発拠点が多く、広州には物づくりメーカーが集まる。そして注目すべきは深センである。深センは中国国内のITをはじめ、ベンチャーや新興企業が集まる。深セン地域で来料加工を行っていた多くの日系企業は労働集約の地域と捉えているかもしれないが、中国をはじめとしたグローバル企業が捉えている深センの人材マーケットは最先端の技術を持った人材の宝庫である。このような地域によるトレンドが異なる中国では地域特性を活かしつつ、採用を計画的に行っていくことは重要だ。
毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。