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中国とアメリカの貿易摩擦

ここ数年は毎年年初に中国の経済予測をテーマとしたセミナー登壇を担当しています。今年の年初にも「2017年を振り返り、2018年の中国経済を予測する」という内容を掲げ、数か所でセミナー講師を務めさせて頂きました。その講義の中で、2017年の実質GDP成長率は前年比+6.9%と前年より0.2%成長率が高まったこと、その主因は対米向けを中心とする貿易黒字の増加であり、2018年はトランプ大統領による対中貿易が見直され、一部品目の関税引き上げと、それに対する中国の報復措置が図られるので、2018年の実質GDP成長率は6.5%程度に着地するだろうという拙講をさせて頂きました。実際、中国の2017年の対米貿易黒字額は前年比10%増の約2,760億ドル(約30兆円)となり、過去最高を更新しました。

ところが中国の対米国の貿易黒字の勢いは2018年に入ってからも衰えることがなく、2月の貿易統計によると、2018年1~2月の対米黒字は前年同期比35%増の429億ドル(約4兆5千億円)と昨年をさらに上回る伸び方をみせており、アルミの輸出は12月に前年同期比26%増の総額82万トンと、米国向けも増加が続いています。

アルミ産業に関して言えば、アメリカは世界でも有数のアルミ生産国として位置づけられています。アルミ精錬をするのに必要なボーキサイトがアメリカ国内で取れ、製錬工場も多く設置されています。アメリカでアルミ産業の分野ではアルコア社が有名ですが、アルミホイールや乗り物の車体などに使用するアルミ加工製品を大量に製造しています。そのアメリカの基幹産業が中国からの輸入によって脅威にさらされるということで、アルミや鉄鋼産業界はホワイトハウスに対して継続的なロビー活動を行ってきました。その結果、今年3月、トランプ米大統領は鉄鋼とアルミニウムの輸入増がアメリカの安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明しました。鉄鋼に25%、アルミに10%の高い関税を課すというもので、中国が主な標的とみられますが、日本企業も対米輸出品目に含まれているため、決して対岸の火事ではない話です。この「安全保障上」というのがアメリカの戦略で、世界貿易機関(WTO)協定は一方的な輸入制限を禁じていますが、安全保障が理由であれば「例外扱い」できるとしています。ただ、安易な乱用に対し、中国からWTOに対して提訴される可能性もあります。

アメリカの保護措置に対し、中国や欧州などが報復に動き、世界的な貿易戦争に発展する恐れがあります。もともと国家による保護貿易政策に強く反対を表明してきた中国は、現にその後の42日、米国からの輸入品128品目に高関税をかける措置を始めると発表しました。トランプ大統領が中国産の鉄鋼とアルミニウム製品に新たな関税をかける措置を発動したことへの報復措置で、果物など120品目に15%、豚肉など8品目に25%の関税をそれぞれ上乗せする模様です。

2018年秋にアメリカでは中間選挙を控えており、今回の保護政策は選挙をにらんだ対応とみられますが、一方の中国は公共投資を抑制する方針で、外需依存が深まる中で貿易が落ち込めば成長率が急落しかねないため、貿易戦争はできるだけ避けたいのが本音だと思います。アメリカと中国の間の制限貿易が長引き、報復が報復を重ね、そのステージが上がっていけば、世界全体の経済にとって大きなマイナスになることは避けられませんので、それぞれのハイレベルでの協議を繰り返し、早急に決着をつけたいのは米中ともに共通した思惑かとは思います。

 

 

コラムニスト情報

(株)名南経営コンサルティング 清原 学 海外人事労務チーム シニアコンサルタント

1961年兵庫県生まれ。学習院大学経済学科卒。中国の人事労務事情、中国労働関連法の第一人者。共同通信社、AT&Tにて勤務後、上海・大連・無錫・ホーチミン…  続きはこちら...

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