就労許可制度変更の状況
昨年10月から一部地域で試験運用されている中国国家外国専門局による来華外国人に関する就労許可制度の変更から4か月が経過し、全国統一の本稼働まで余すところ1か月となりました。当初、この制度が発表になったときは、日本のメディアも巻き込みながら大きな波紋を繰り広げましたが、新制度の概要ひとつひとつをみていっても、多くの箇所に矛盾が隠されていたり、具体的な解説に乏しいこともあったりして、未だ新規の就労許可を申請する企業や就労許可の更新を行う駐在員は混乱のさなかに放り込まれているようではありますが、新制度によってもっとも混乱しているのはまさに行政当局のように感じられる部分も多々目につき、「試行期間」というのは実は行政の試行期間であったことに今更ながら気がついたりしています。
新制度の概要はともかく、我々がいちばん気になるのは実際に申請手続を受理する行政当局の対応です。4か月が経ち、各地における手続状況を拾ってみますと、結局は地域によってハードルの高さが異なっていたり、求められる提出書類自体が様々であることがわかり、結構申請する側が振り回されることも少なくないようです。
例えば上海の某企業の場合、備え付けの書類サンプルに従って申請したものの、インビテーションを要求され、5回もやり直しを行っているにも関わらず未だ遅々として進んでいない、蘇州では試験地域からは外れているにも関わらず、新しい書類の提出を求められている、深圳ではそもそもB類人材が要求される60点という点数が高すぎるから、それ自体を見直す動きがある、他の地域でも提出書類に領事館承認をもらって来いとか、年収は手取りか税引前かを記載しろとか、各地から多くの現状が伝わって来ています。
こうやって混乱している中でも段々と明らかになってきているのは、「年齢上限」「学歴」「経験年数」の3つがいずれの地域でも共通して特に厳しくみられているということです。どうやらここのところは譲れない条件のようです。申請書類の統一化や年収条件が中国国内だけの年収なのか、あるいは申告ベースの課税対象年収なのかなどについてはおそらく徐々に見解がまとまって収束していくのでしょう。ただその中でこの動かしようがない3条件については受け入れるしかないのだろうなと実務をみていて実感するところではあります。
やはり今回の制度改正については現地に駐在している日本人の方だけでなく、駐在員を送り出す本社側にとっても大きな影響を及ぼしているようです。ましてや限られた人的資源の中で駐在員を工面している中小企業などは限られた条件下ではもはや出向させる社員もメドが立たなかったり、技術職で派遣する社員も学歴制限によって許可対象にはならなくなったりと、駐在候補者選びから条件に該当するかどうかを慎重に検証していくことを迫られているようです。4月からの本稼働に向けて、またその後も引き続き、当分この混乱は収まりそうにありません。