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2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.11
来年度に向けて進める準備

2016/11/25 執筆者 :

前回は中国の社会保険制度や責任保険を紹介した。今年も残すところ1カ月半。1月から新年度を 迎えるにあたり、ちょうど予算を立てている企業が多いのでないだろうか。今号では、予算組みをす る上で人事戦略を高めるため必ず社内で議論したいポイント三つを紹介する。

 

◇予算に組み込みたい三つのポイント  

三つの人事ポイントは「制度」「研修」「管理(システム)」である。まず制度については、役職や 等級をはじめ、評価や報酬制度の見直しである。労務リスクマネジメントの観点から、最低限自社の 人事制度が法令順守しているかはチェックしておきたい。労働契約法や各種法律は日々変わることが あるため、日頃から改正に関する情報は自ら入手するよう心掛けたり、年に一度は自社の契約書や就 業規則が法律に適合しているかどうかを振り返ることが重要だ。

 

例えば、今年の年初には、新「中華人民共和国人口および計画生育法」が発表され、一人っ子政 策が廃止(出産調整の基本原則の変更)された。晩婚休暇の廃止等に伴い、多くの企業では就業 規則の改定を実施している。また、広東省では9月末に育休が50日伸びたことが話題になっている。 このような中国全土にまつわる法改正や省ごとの条例を踏まえて就業規則の見直しを行うことが大切 だ。労務リスクマネジメントを構築し、その後役職等級や報酬制度等の他の制度づくりに着手でき る。年末までに、しっかり法改正や人事制度の見直しについて話し合う機会を設けることをお勧めする。

 

▼グラフはパソナが実施した調査による昇給率。予算を組む上で昇給率もチェックしておこう。

 

昇給率_パソナ上海給与調査
経営戦略が変われば人事制度も変更するが業態変化や異なるマーケットを開拓せずとも、現状の シェアの拡大を目指すなど、会社が立てた計画を従業員に達成してもらうためには、どのような能力 が必要かを考え、個々人の能力を開発していくことが大切である。つまり、二つ目のポイントは教育 研修である。

 

本連載の第9回で触れた通り、在中邦人数は減少傾向にある中、進出している日系企業数は増加 している。従って、ローカル社員の採用や研修ニーズが高まっており、彼らの活躍が期待されている。 企業理念をはじめ、基本的なビジネスマナー、「ホウレンソウ」等のコミュニケーション、資料作成等、 自社でコンテンツをしっかり作れる研修は積極的に自社で実施することを勧める。このような社員全 体の底上げに加えて、ローカル社員の中でもさらなる成長を期待する優秀な社員を選抜した研修や幹 部候補者研修も企画・実施することが大切である。高度な研修は自社だけで実施することは困難な ため、ビジネスパートナーや研修、人材会社をうまく活用し、また日本本社も巻き込んで、将来の幹 部候補生たちに対して、マネジメントスキルの開発を行うための、来年の予算を立てるといいだろう。

 

予算作りで覚えておきたい最後のポイントが、管理(システム)である。人事制度や研修はしっか り出来ている会社でも、管理がそれらと同水準で整っている会社は実はまだ少ないと感じる。例えば、 社員一人ひとりのこれまでの成果、研修履歴、キャリアステップ等をシステムで一括管理しているケー スはあまり聞かず、多くの企業はエクセルやアクセスで各項目をそれぞれ個別のデータとして保管して いる場合が目立つ。現在いる人事担当者がずっといるならこのような管理でも機能するかもしれない が、やはり担当者は異動や転職等で変わるものだ。会社が従業員と信頼関係を築くためにも、新任 担当者であっても社員一人ひとりの情報を把握できているかどうかは重要である。社員の人事情報管 理は健康診断のようなもの。定期的に、継続的に、一括で管理することで情報が報酬や評価、また 研修に生かされる。場合によってシステム導入はまとまった予算が必要となるため、新年度の予算組 みに合わせて検討することを推奨する。

 

◇総合的なアプローチを  

企業からはよく人件費に関する問い合わせをいただくが、賃金は人事制度のある一つの側面にすぎ ない。企業が抱える課題を解決するには賃金だけではなく、昇給や評価制度、そして研修や従業員 の管理までを総合的に取り組むことで会社の成長に寄与する人事戦略となる。毎年GDPとほぼ同じ 数値で推移する昇給率のマーケットにおいて、同じ仕事をしている社員に同じ給与を与えていては会 社の人件費が高騰するのは当然である。役割の定義や評価制度が中国の環境や働く人々のキャリア 感に適したものを構築することが大切である。

(以上)

 


毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。

給与情報・福利厚生分析レポート