≪中国とEUとの関係≫
イギリスがEUを離脱するという国民投票が今年6月に行われ、残留支持48%、離脱支持52%という結果となり、イギリス国民のEU自体の政策に対する不満や移民問題がクローズアップされ、世界を震撼させる事態が起こったのは記憶にも新しいところかと思います。この動きはフランスやオランダにまで波及し、EUという地域統合のあり方にも大きな一石を投じた結果となりました。
そのEUと中国との関係ですが、EUの最大の貿易相手国であるアメリカとの貿易額は年々下がって来ている一方、第2位の中国との貿易額は2000年に入ってから右肩上がりで、3位のロシア、4位のスイスを大きく引き離し、今やアメリカに追いつく勢いをみせています。
このように一見好調な様子をみせているEU中国貿易ですが、今年10月20日、欧州委員会は中国をWTO上の「市場経済国として認定しない」という方針を採択しました。ただEUにとって中国は貿易上の最大取引国のひとつとして一定の配慮を示し、正面からの対立は回避したい姿勢もみせています。EUがこのような基本方針を採択した原因は中国のダンピングにあるとみられています。2001年12月にWTOに加盟した中国はその後15年間「非市場経済国」として関税や政府の補助などを徐々に適正な競争に移行していく義務を課せられていましたが、その15年間の猶予が失効するのが今年12月となります。ところがEUからはいまだに中国政府は企業の生産や貿易を有利にするための補助金を与えているケースがあり、これが不当競争であると認識しているのです。ところがEUが非市場経済国として認定してしまうと、対抗措置として反ダンピング関税をかけられやすくなってしまうとの理由から、今回のEUの採択には強く反発しています。EU側も市場経済国として認定してしまうと、安い中国製品がEUに流入し、EU全体の市場競争力が削がれることから大量の失業者を出し、域内の経済は混乱するという懸念を抱いています。
中国のWTO加盟からもうすぐ15年が経とうとしています。中国はWTO協定で定められている市場経済国としてEUやアメリカから認められる国となるのか、少なくとも非市場経済国としての認定はされないでしょうが、国際競争の一員として残された時間はあまりにも短いものなのです。