中国での転職・就職・求人情報サイト

上海・広州・深圳での転職ならパソナ中国へ



2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.9
人事戦略の現地化の秘訣

2016/09/21 執筆者 :

前回は企業の盲点になりがちな人事管理業務について紹介した。

今号では、中国で日系企業の現地化が進む背景や現地化を成功するためのヒントを探る。   外務省の「平成28年 海外在留邦人数調査統計」によると、海外に在留する邦人数は131万7,708人で前年より約2.1%上昇している。最近、内向き志向の日本人が多いと耳にするが、実態は海外で暮らしている日本人は増えている。また、世界での在留邦人の推移を見ると、男女比率がほぼ50%に近いが、アジアでは男性が62%と少し多い。PwC Japanのレポートによると、海外に派遣される女性の割合が過去10年で2倍に増えたという結果もあるので、今後はアジアでも女性駐在員が増えるのではないかと思う。   アジアにいる邦人数は38万5,507人で、そのうちの約33%にあたる13万1,161人が中国にいる。平成21年以降アメリカにいる邦人数は増加傾向にあるが、中国は平成24年から年々減少している。これは政治的要因が大きいと考えられる。実際、中国に住んでいると日本人が減っているという感覚があり、北京や上海の日本人学校の生徒数は減少傾向にある。   このように中国在住の邦人数は減少傾向にある一方で、実は中国に進出している日系企業(拠点)数は平成24年以降、毎年増加している。平成27年は前年比2.2%増の33,390社(拠点)で、日系企業の進出先としては世界の中で最も多い。続いて2位は、上述したアメリカである。在米邦人数は増加しているが、日系企業(拠点)数は7,849で前年比0.4%増にとどまっている。また、都市別に見てみると在外公館別日系企業(拠点)数では、上海(22,220)が群を抜いて多い。

中国経済が以前の力強さを失っているなか、毎年進出している企業数が増えていることには私自身正直驚いた。撤退論が一部で騒がれているが企業数が増加している背景には、特に上海や都心部を中心に、国民の所得が上がり、サービス業が積極的にビジネスを拡充していることが想定できる。また、日本人駐在員は人件費が高く、現地のビジネスが少しずつ定着してきていることから日本人を帰国させていることがこのトレンドの背景にあると考える。

 

現地化の結果生まれるHRニーズ

このように中国に進出している日系企業の現地化が進んできたことに伴い、人事関連では大きく2つのニーズが生まれている。一つは、「教育研修」だ。ローカル社員の活用が進むなか、マネジメント層の研修ニーズが高まっている。これまで駐在員が担ってきた管理業務、また日本本社とのパイプ役としての異文化理解を含めたコミュニケーションスキルの研修が重要となる。 興味深いのが、欧米と日系企業におけるマネジメント研修の中身の違いである。多くの欧米企業では、ロジカルシンキングや問題解決力を養うコンテンツが求められる。一方で、多くの日系企業では、チームビルディングやコミュニケーション力に関連する内容のニーズが高い。いかに日系企業が人との関わりやコミュニケーション、つまりソフト面を重視しているかが伺える。 では、中国人はどこにあてはまるのか。比較的やはり欧米企業が求めるスキルを身に付けたいと考えている人が多いといえる。よって、中国に進出している日系企業がローカル社員を対象にマネジメント研修を実施する際は、組織力や管理能力を高めるコミュニケーション力などのソフトスキルに加え、論理的思考能力や交渉力等の研修も含めることをお勧めする。その方が受講するローカル社員の満足度はもちろん、現地のマーケットで勝ち抜く人材を育てるためにも有効的である。 企業の現地化によって生まれているもう1つのニーズが「マネジメント層の採用」だ。これまでは営業や人事職の求人が多かったが、最近では1万5千元以上の管理職のローカル採用が活発になってきている。企業がマネジメント力をはじめとした経験を持ったシニア層を積極的に採用しているのは地域に限らず起きているトレンドである。

 

報酬とフィロソフィー

冒頭に指摘した通り、日系企業がこれほど増えてきているので当然優秀なローカル社員の採用は争奪戦となっている。これまでと同じ給与テーブルではいい人が採用しにくい状況にあるのが実態だ。中国の採用担当者、また日本本社も日系企業の報酬・評価制度は世界からみて特殊であるということを、まず認識する必要がる。企業の人事制度をグローバルスタンダードに変えていく努力をしなければならない。グローバルに活躍する部長クラス以上の優秀な人材が、日系企業での仕事を「魅力的」だと思うような制度にする必要だ。そういった観点で、高い報酬は重要である。もちろん、働きがいや会社への帰属意識は、給与だけで決まるものではないが、日系企業が思っている以上に、優秀なローカル人材にとっては、自分への評価の基準として、給与・報酬は重要な要素のひとつである。   ローカル社員が増えるなか、もう1つ重要なのが企業理念やトップマネジメントの考えを浸透する取り組みである。企業理念がしっかりしていて、それを日々の業務活動のなかでも活かそうとするのは日系企業の強みの一つだ。採用活動や営業活動においても、社員一人ひとりが会社のフィロソフィーをしっかりと理解し、自分の言葉で語れるかどうかは組織の強さに繋がる。 (以上)


毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。 給与情報・福利厚生分析レポート