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2016 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.3
賞与と離職率の関係

2016/03/31 執筆者 :

前回は、ローカルスタッフ及び日本人駐在員の増減予測について紹介した。今回は、賞与と離職率について見ていきたい。

 

過去3年、賞与の推移は大きく変わっていない。2015年の実績は1.92ヶ月で2016年の予測は1.89ヶ月という結果となった。地域による差もほとんどない。大手化粧品メーカーや食品メーカー等の中国の国内市場をターゲットとした小売業は平均値より高い傾向にある。国内のB to Cビジネスが好調なのが見受けられる。

 

▼ボーナスの推移

ボーナスの推移(単位:月)

賞与の有無については、89%が「あり」と回答している。JETRO201510月に実施したアンケートでは中国の日系企業の2割以上が業績赤字の中、弊社の調査では賞与を出す企業が約9割もある状況は、率直に多いと感じる。その背景には、赤字で厳しい状況ではあるが一部の優秀な社員まで離職されては困るので、ボーナスを出している企業があること、また、労働契約書面上に最低賞与月数を明記しているので払わざるを得ない企業があるのではないかと思われる。

 

▼賞与の有無

賞与の有無

 

 

評価制度と人事考課の重要性

皆さんもご存知の通り、賞与は会社の業績に連動する。と同時に、個人の評価も大きく寄与する。当然個人評価が低かった社員は賞与も低い。公平、公正な人事制度の構築は大変重要で、その整備を急ぐ企業は多い。また制度構築と同じく大事なのが、上司と部下の間で生じる、評価・目標管理を話し合う人事考課である。

 

毎年春節の時期は求人数が増加する。日本でも賞与支給後に人が動くといわれるが、中国も例外ではない。中国の場合、賞与を渡すタイミングとしては、年度評価が終わる1月に支給するか、春節後に支給する日系企業が多い。

 

賞与支給をきっかけに、多くの人が動くこの時期は、企業から特に評価制度に関する問い合わせが多くなる。「どのような評価制度がいいのか」「ローカルスタッフは何でも“できた”と言うが実際は・・・。どのように会社の評価を伝えたらいいのか」等、制度全般の悩みから具体的な事例まで、色々な話を伺う機会がある。

 

多くの場合、「評価制度」だけで判断するのは難しい。人事諸制度を有機的に繋げる必要があると考えるためだ。各等級・役職に応じたジョブディスクリプションの作成から、それに応じた目標設定、評価、昇格昇進、報酬の体系など一つひとつ細かく制度を決めると同時に、各制度間でひずみが起きない人事制度になっているか、俯瞰的に見る必要もある。

 

大手の日系企業では人事制度がしっかり整備されているケースが多い。役職に応じた評価制度が構築されており、運営がなされている。一方で、多くの中小企業の場合、評価が属人的に行われているため、明確な評価基準がなく、ローカルスタッフが「これだけやったのになぜ」と人事考課時に不満を抱くケースは少なくない。管理職が評価で悩んでいるようであれば、評価方法だけではなく、人事諸制度全般を見るのも一つの手だ。

 

 

フレームワークとコミュニケーション

このような不満から社員の離職を避けるためには、四半期や半期に一度の振り返り以外に、日々部下と目標設定の達成度について、コミュニケーションを取る必要がある。目標に到達しないようであれば、上司からサポートを行い、目標達成について話し合うことが重要だ。部下が積極的に上司に話をする積極性も大切だが、一方でコミュニケーションは上司(権限を持っている人)が下りてくることで円滑になることもある。日本人管理職は幅広い業務を行うことで、部下とのコミュニケーションが少ない傾向があるので、意識して、部下とコミュニケーションを取ることをお勧めする。きちんと上司が自分の目標をどう達成するかを一緒に考えてくれたり、気にかけてくれていたのに目標を達成できず賞与や連動して昇給が低ければ、本人も納得しやすいのではないだろうか。逆に、上司がこのような密なコミュニケーションを図ってくれなかった、と社員が感じれば、この不満が「給与を上げてほしい」という会社に対する不平の声に変わってしまうケースがある。

 

以前、大手自動車関連メーカーから、社員との人事考課の際に通訳スタッフを同席させたいということでパソナに依頼を頂いた。その会社の社内には、中国語と日本語のバイリンガル社員がいるにも関わらず、かなりレベルの高い通訳スタッフを求めていた。自社のバイリンガルスタッフが人事考課の通訳を行うと、従業員から通訳者に対して「しっかり通訳したのか、意図していたことと異なる内容を伝えていないか」など問題に発展するケースを防ぐためだ。専門の通訳者を雇うことによって、会社のスタンスはローカルスタッフに対して、「しっかりとコミュニケーションを図りたい」という企業姿勢がプラスに伝わると同時に、社内のバイリンガルスタッフを守る意味もある。

 

 

離職率、実は低い

2015年は離職率(ホワイトカラー)が10.9%だった。地域別では、華南地区が最も高く、華東、華北地区と続く。加えて、華南地区の中でも、深センの離職率が13%と高い。本データは労働市場全体のため、単純比較はできないが、一般的に日本では大卒新卒入社の3割が3年で辞めると言われるため、実は中国の離職率は決して高くはないのではないだろうか。日本は終身雇用の習慣が根強く、労働者が守られている。一方で中国は12年の契約を結ぶ文化のため、社員は日々成果が求められる。この背景を考慮すると、尚のこと10.9%の離職率はむしろ低いと感じる。

 

▼地域別の離職率

地域別の離職率1

地域別の離職率2

 

 

また、一定水準で離職率はあることは、社内の活性化にも繋がるので、0%にする必要があるかどうかは議論が必要だが、単純に退職している社員の数だけでなく、その中でコア人材が辞めていないか、逆に代替可能な業務を担当している社員だけが滞留していないか等、細かく組織を検証する必要がある。数字データは一人歩きしてしまうと例えば日本本社から「中国法人の社員はすぐ辞める」等の誤解を招いてしまう。こうした本質を分析するために企業から相談を受けることは多々ある。

 

このような離職に関する相談は大変多い。ローカルスタッフが転職する多い理由としては「上司との意思疎通ができない」や。「賃金」である。前述した通り、マネジメントする上司と部下とのコミュニケーションは本当に大事である。上司や会社は社員に企業の方針を十分伝えている、と思っていても意外とそれが伝わっていないケースが多々見受けられる。日本の場合、あまり細かいマネジメントはしなくても会社のメッセージや上司が部下に期待していることが伝わっていることが多い。また「先輩」や「メンター制度」が整っているため、上司ではない部員がこの役目を担っているケースも日本ではあるが中国では運用している会社は少ない。マネジャーがやはり一人ひとりの部下とこまめにコミュニケーションを高めることが従業員の不満解消やコア人材の離職率を下げるポイントではないだろうか。

 


 

毎年パソナが実施する給与情報・福利厚生分析レポートは、下記よりご参照くださいませ。

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