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中国人事労務の基礎知識

2015 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.6
労務リスクマネジメントが重要-中国における人事戦略

7月中旬に上海強格楽管理諮詢有限公司の講師を招き、「中国人の気質に応える人事マネジメント とは」と題したセミナーを北京、上海、広州で開催し、主に日系企業の日本人管理職110人が参加 した。その際、参加者に人事制度において、今後力を入れたい、もしくは改善したい項目について聴 いたところ、北京および広州会場では「評価制度」がトップに挙がった。一方、上海市は本社機能が最も集まっており、評価や給与等の制度はある程度整ってきていることから、「教育研修制度」が今後の課題として第1位だった。

評価制度をはじめ、教育研修や給与制度にしても、重要なのは中国人の気質を理解し、それをきちんと人事制度に反映させることだ。もちろん個人によって異なるため、民族の気質をまとめてしまうことには無理がある。したがって、国籍に関係なく社員と「コミュニケーションを図る」ことが最も重要だ。上司が部下にしっかり時間を取っているかどうか、といった日ごろの積み重ねが鍵を握る。そこで、 ここでは幾つか中国社会や中国人の特徴を理解し、最良のコミュニケーションを図りながら、さらにそれを人事制度に落とし込むとはどういうことなのかを紹介したい。

 

◇中国での人事がうまくいかない本当の理由

中国における人事マネジメントのポイントをご紹介する前に、まず日系企業が中国で人事に苦労する背景に触れておきたい。

中国で人事がうまくいかない理由は制度設計の問題もあるが、そもそも日系企業が中国に必ずしも人事や管理部門の経験者を送り込んでいないことが原因の一つと言える。世界の生産工場として、また今では有望な市場として、企業は高品質な製品を作り、販売しようと技術職や営業職経験者を中国に着任させることが多い。当然、営業や技術者は現地での採用や研修、給与制度などの人事マネ ジメントばかりか、バックオフィス業務、また企業の統制をどう図るかなどのノウハウを持っていないことがほとんどだ。

このような場合、中国に着任したマネジメント層は日本本社から人事部門のサポートを求めている が、本社からすると、中国法人で考え、制度設計や運営を行ってほしいと考えるので、ここにまずギャップが生じている。

制度設計がしっかりしていないと、予期せぬトラブルが多発する。小さなトラブルが積み重なって、 残念ながら制度や法律上の問題にまで発展し、企業が痛手を受けてしまうケースを数々見てきた。 日本本社に対しては「中国法人をしっかりバックアップしてあげて」と思うこともあるが、中国、日本両方で問題意識を持つ必要があるだろう。

 

◇労務リスクマネジメントにおいて企業が抱える三つの課題

「労務リスクマネジメント」と「人事制度」を誤って理解していたり、この二つを混合したりしている企業は多い。「理解している」と思っている担当者は多いだろうが、実際には人事経験者と違い、営業や技術畑の方にはこの違いが根付いていないことが少なくない。人事戦略においては、これらをそ れぞれ整えていく必要がある。

労務リスクマネジメントは人事マネジメントの基本であり、労働契約と就業規則の整備が第一歩である。等級制度をはじめ、昇格、給与・報酬、人事評価、教育研修等の各種人事制度の構築も当然重要だが、これらを整えた上でしっかりリスクマネジメントを行うことが戦略的な人事マネジメント を遂行するために不可欠である。

最近、労務リスクマネジメントにおいて、企業からよく問合せがある課題が三つある。

一つ目は「ローカルスタッフの給与を下げられず困っている」 これは会社としてルールを作っていないだけのケースが多い。法に適した形であれば、給与調整は中国で十分できる。最新の法律に沿った制度や書き方さえ注意すれば、回避できる労務トラブルの一つだ。

 

二つ目は「ハラスメントに関する研修を実施してほしい」 パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに関する研修ニーズが最近高まっている。職場をはじめ、会食時、また昨今ではSNS等ネットにおけるさまざまな社員のハラスメント対策も企業リスク 管理の一環として、実施する重要性は言うまでもない。ローカルスタッフを含めた全社員、あるいは対象者を管理職に限定した研修など文化の違いを考慮したハラスメントに関する意識をいま一度社員 に高めることで、企業の実質的な損失はもちろん、ブランドを傷つけることを未然に防ぐニーズは今 後も高まるだろう。

 

最後の三つ目は「進出して数年たち、人事制度全般を見直したい」 中国では、1995年に労働法、2008年に労働契約法が施行され、労働契約法は12年12月に改正、13年7月に改めて施行され、変更が繰り返されている。改正時はもちろんのこと、運用面においても常に新しい情報を取り入れ、自社内の契約や就業規則、人事制度や各種規定を更新しないとトラブルにつながる。この点、人事部経験者だとこうした意識を持っているが、日々営業に励んでいる営業や技術経験者には盲点になりやすい。政府の労働法に対するアクションについてアンテナを張ることをお勧めする。

 

会社の未来、人事戦略を真剣に考えるローカル社員はいるか

中国に根付いてビジネスを成功させるためには、会社の宝となる「人」、つまり人事戦略を考え、構築し、運営を担える優秀なローカル人事スタッフが必要だ。会社のビジョンを経営層と共に語れる高い目線を持ったローカルスタッフを社内で育てるか、あるいは外から雇う必要がある。

 

パソナが中国に進出する日系企業1214社を対象に実施した「在中国日系企業における現地社員 の給与・福利厚生に関する調査」では、会計・財務職、営業職や機械エンジニア等の職種では年収総額が昨年比で平均7~8%上昇しているのに対し、人事はわずか1%の上昇だった。この背景はいろいろ考えられるが、これではローカルスタッフの人事プロフェッショナルは育たない。評価する日本 人が人事の社員の評価を適切に行い、事務作業のみならず高い給与に値する人事部のコア業務をローカルスタッフに任せていくことが必要かもしれない。

日系企業の強みの一つに「人を育てる力」がある。営業や技術職は、海外赴任することも多く、ローカルスタッフの育成に関しても、考えられていることは多いが、残念ながら人事の人材は育っていない。 これまでの中国市場は、経済全体の成長に合わせて個々の企業も成長してきた。今後はもっと戦略性を持って事業計画を立てたり、その事業を遂行できるタレントを採用し、育てる、中国ならではの人事戦略が求められる。人事経験者を日本本社から中国に送り込むなど、中国法人の中核を担える人事プロフェッショナルを育てるのが課題ではないかと考える。

コラムニスト情報

株式会社パソナ グローバル事業部 金澤 聰一

1999年多摩大学卒業。同年株式会社日比谷花壇に入社。
営業部で装飾ディスプレの新規開発営業を担当。その後人事部に異動、新卒採用を担当する。2004年…  続きはこちら...

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