中国民営企業に見る 人を動かす成功哲学
海底捞火锅 ①企業文化編
海底捞火锅に、行ったことはありますか?この火鍋店はそのサービスレベルの高さで知られ、
いつ行っても満席です。
実際、イキイキと働く笑顔あふれるサービス精神旺盛な従業員と、彼らが行うパフォーマンスの数々に
食べる事以上の楽しみを覚えついリピートしてしまうのです。
海底捞火锅は、なぜそのような高いレベルのサービスを提供できるのでしょうか?
そこには、現代の中国人マネジメントのヒントがたくさん隠れています。
今回は、ある従業員の手記を基に、その舞台裏を検証します。
1.企業文化編 「ESなくしてCSなし!」
■従業員を感動させる
日本の多くの飲食店は笑顔やサービスが良いと言われていますが、退勤後の彼らの顔はどうでしょう?
疲弊し、疲れ切って業務中の笑顔はどこへやら、という光景も珍しくないのではないでしょうか。
しかし海底捞のスタッフは違います。従業員達は疲れ切った様子もなく、激務の後も皆笑顔なのです。
心から仕事を愛し、本気で取り組んでいるからこそ、疲れを知らず笑顔でいられる
――そこには、共に熱い思いを持つ同僚、仕事の環境、上司、そして会社から受ける
従業員一人一人の「感動」が関係しています。
なぜ、従業員を感動させる事がそれほど重要なのでしょうか?
1. 「(リーダーは)10人の顧客よりも、5人の従業員を感動させよ」
2. 感動があるからこそ一人一人が主体的に仕事に取り組むようになる
――良いサービスはマニュアルや厳しい訓練ではなく、従業員が受けた親切や感動を顧客に伝達させることで
実現できる、というのが海底捞の考え方。
そのため、海底捞ではリーダーとして従業員を感動させることは重要な任務の一つであり、
徹底的に従業員の良い所を発見し、要所要所で表彰したり励ましあう文化が根付いているのです。
■従業員を一番に尊重する
では、どうすれば従業員を感動させられるのでしょうか?
海底捞の幹部はこう語っています。
「絶対に従業員一人一人を大切にすべき。彼を雇わないことはできるが、愛さず無関心でいるのはいけない。」
会社が一人一人の従業員を大切に思っているからこそ、従業員の心に感動を生むことができるのですね。
海底捞ではこの従業員重視の姿勢が、ほぼすべての文化・制度に貫かれています。
(後編「制度編」をお楽しみに)
■とにかく励ましあう
海底捞では毎日の例会で、店長が従業員を感動させ鼓舞するスピーチをします。
(たとえば「松下幸之助の250年計画」など!)それからそれぞれの持ち場で忙しい一日が始まるのですが、
その間もそれぞれの現場のリーダーが一人一人に良く目を配ってくれます。
たとえば、研修中のキッチンの清掃担当が良い仕事をしていたとすると、
退勤前にキッチンマネージャが一礼して声をかけてくれます。
「今日はとても良く清掃してくれましたね、ありがとう」
更にそれを研修担当に伝え、退勤後の小例会で研修担当がみんなの前で一言褒めてくれ、
リンゴを一つくれる。
どんなに小さなことでも皆の前で表彰してくれる・・・こんな光景が毎日、大きな例会でも小さな例会でも行われているのです。
また、従業員同士もお客様に接するのと同じ礼儀で接するよう要求されています。
たとえば、顔を合わせた時は右手を胸にお辞儀をして(お客様向けと同じ動作)、
「你好,辛苦了!」(お疲れ様です!)とあいさつします。
仕事中も同じで、例えばホールスタッフが汚れた食器を食器洗い担当に手渡す時も、
「你好,辛苦了!请回收!」(お疲れ様です!回収お願いします!)と礼儀を忘れません。
すると食器洗い担当のおばちゃんもこう答えます。「收到,谢谢!」(受け取りました、ありがとう!)
こうして従業員たちは、上司からも励まされ、従業員同士でも励ましあい、
高いモチベーションで働く事ができるのです。
~後半「②制度編」へ続く