2015 給与情報・福利厚生分析レポート_Vol.1
在中国における日系企業の教育研修の実態 2015年の教育研修のトレンド
前回は日系企業の昇給賞与について述べた。今回は、日系企業のナショナルスタッフを対象とした研修をテーマに話を進めたい。賃金の上昇に伴い、従業員一人ひとりの質の向上が求められ、現地化に伴うコア人材の育成について議論されることが多くなった。また、各日系会社ではナショナルスタッフ向けにどのような研修を行い、従業員のリテンションにつなげていくかにも引き続き議論の俎上(そじょう)に載っている。上記課題についての日系各社の取り組みをアンケートデータを基に考察していく。
ナショナルスタッフ向けの研修を実施している企業は72.8%で、研修制度を設けていない企業は27.2%だった。仕事をこなしていくことが一番の成長であることは確かだが、教育研修を取り入れ、スタッフをサポートすることも重要だろう。多数の日系企業が従業員向け研修を実施する中で、実際にどのような研修を取り入れているのだろうか。
「導入済」の数値は、2013年に調査したデータと比較すると大幅な変化はないが、「導入を検討中」は各種研修で増加している。特に管理職研修は前回「導入を検討中」が20%弱であったのに対して、2014年は約50%に増加している。このデータから分かることは、日系企業各社がナショナルスタッフの管理職養成に力を入れており、今後も管理職養成に力を入れていくことがうかがえる。
管理職やリーダー育成、技術スタッフの育成の一環として、最近は、日本本社や第三国への研修を取り入れている企業も多く見受けられる。今回の統計では、52.9%の企業が海外への研修を既に導入している、との回答が出た。ナショナルスタッフ向けの研修を実施している企業の約半数が海外研修を取り入れている。特に機械自動車関連や通信・IT、消費財を取り扱う企業の導入が目立っていた。
海外研修の期間は、65%の企業が1カ月未満としている。日本本社の受け入れ態勢や中国現地会社の仕事、ビザの問題など課題はあるだろうが、せっかく海外まで研修に行かせるのであれば、もう少し長い期間、研修先に滞在したほうが良いのではないかと感じる。一方で、時間とコストをかけた人材がすぐに退職するリスクがあるということも企業側の悩みとしてある。
一般的には、海外研修を実施するに伴い、研修を受けるスタッフと研修契約書を交わしている。契約書を交わすことは、コア人材の一定期間の引き留め策に置いても重要だ。しかしながら、日系企業では、約50%の企業しか研修契約書を交わしていないのが実態だ。せっかくの優秀な人材を自社で長く勤めてもらい、貢献してもらうためには、このような契約書の整備も必要になってくるだろう。
研修契約書を作成している企業の中で、約50%の企業が3年未満の拘束年数をうたっている。1年未満はかなり少なく、1年以上3年未満が一般的だ。
【参考情報】
労働合同法第二十二条により、雇用単位が労働者のために専門の研修教育費用を提供し、労働者
に対して専門技術研修教育を施す場合、当該労働者と協議を締結し、在籍期間を約定することがで
きる。労働者が在籍期間の約定に違反した場合、約定に従い雇用単位に対して違約金を支払わなけ
ればならない。違約金の金額は雇用単位が提供した研修教育費用を上回ってはならない。雇用単位
が労働者に支払いを要求する違約金は、在籍期間の未履行部分に分担される研修教育費用を上回っ
てはならない。雇用単位と労働者が在籍期間の約定をすることは、正常な賃金調整制度に従って、
労働者の在籍期間における労働報酬を引き上げることに影響しない。